ミックス・コーヒー
「……貴之、どうするつもり?」

「あいつを追い出す」

「待てよ!」
 さすがに、尚樹が声をあげる。

「帰る家がないって、美葉、言ってただろ」

「なんでおまえは、そんなに信じてやれるんだよ! どこからどこまでが嘘か、わからないだろ!」

 声を荒げ、目を強く閉じる貴之に、尚樹はどうしようもなく違和感を感じた。

「貴之……、どうしたんだよ。たかが、苗字をちょっと変えて言っただけだろ。なんでおまえは、そんなになっちゃってるんだよ」

 貴之が眉間に力を入れたまま、目を少しだけ開く。
 自分のまつ毛が震えているのが、少し見えた。

「……悔しいんだよ。あいつのこと、わかってるつもりになってた。オレの、勘違いだったんだと思ったら、騙されてたって思ったら、すげえ憎くなった」
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