ミックス・コーヒー
 どうやら、上手くいったようだ。
 玄関すら開けてもらえないようでは話にならない。 

 数秒後、ドアが開いた。
 出て来たのはだいたい三十歳前後の、派手な雰囲気の女だった。
 美葉の母親……にしてはあまりに若すぎる。
 姉、とかだろうか。

「どなた?」

「あ、あの……美葉さんいますか?」

 貴之は自分で、失敗した、と思った。

 ついつい慌ててしまった。あまりに唐突過ぎる。
 貴之は、明らかに本番に弱いタイプだった。

 それを示すかのように、目の前の女の表情がみるみるうちに険しくなる。

「なに、あんた達。あの子の知り合い?」
 口調も変わってしまった。

「……いるわよ。会いたいの?」 

 はい、と貴之は答えた。

 女は続ける。
「そう。でも、会えないわよ。会わせちゃダメって言われてるの。あの子のパパから」
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