ミックス・コーヒー
「……美葉が、家を出る前も、ずっとこんな状況だったんですか?」

「そうよ」
 
 貴之は、この先にいるだろう美葉のことを思い、居た堪れなくなった。

 それと同時に、この女の行動の意味がわからなかった。

「オレは、美葉を連れてってもいいんですか?」
「ダメよ。私、怒られちゃうもん」

 即答だった。
 ますます頭が混乱した。

「でも、私、本当はあの子に出て行って欲しいの。普段、顔をそんなに合わせるわけじゃないけど、マジで邪魔なのよね。あの子自身もこの家から逃げたがってるみたいだし。だから、あの日わざと鍵をかけ忘れたフリして、協力してあげたの」

 あの日、とは美葉が家を出た日のことだろう。

「まあ、あの子のパパにすっごく怒られたけど。しかも探偵まで雇って、あっさり戻ってきちゃったし」
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