ミックス・コーヒー
「……尚樹。だ、誰だよ、こちらの方は!」
貴之は動揺しながらも、長身の男<尚樹>に、やっとで絞り出した声を投げつける。
ちなみに、それはかなり上ずっていたが、仕方のないことなのかもしれなかった。
尚樹は尚樹で、別の意味で慌てているようで、早口で話しだした。
「貴之。とりあえず、話は後にしてほしい。この女の子、すっかり体が冷えきってるんだ」
「なんで、女の子だと言い切れるんだよ!」
「この毛布を見ろ。ピンクだろ!」
「ピンクの毛布ぐらい、ジジイにも使わせてやれよ!」
しばらく、豪雨の煩さにも引けを取らない二人の口論は続いたが、結局珍しく押しの強い尚樹に負け、渋々貴之は<ピンクの毛布の女の子>を自宅の中に入れることに納得してしまった。
尚樹がリードして、客人を居間に誘導する。
その後ろを貴之が、客人の通った後に付く汚れを雑巾で拭い取りながら四つん這いで追いかける。
「あれ、貴之。おれ<風呂沸かして>って言ったつもりだったけど」
ふと、居間のテーブルに乗っているヤカンを見て、尚樹が首を傾げる。
貴之は動揺しながらも、長身の男<尚樹>に、やっとで絞り出した声を投げつける。
ちなみに、それはかなり上ずっていたが、仕方のないことなのかもしれなかった。
尚樹は尚樹で、別の意味で慌てているようで、早口で話しだした。
「貴之。とりあえず、話は後にしてほしい。この女の子、すっかり体が冷えきってるんだ」
「なんで、女の子だと言い切れるんだよ!」
「この毛布を見ろ。ピンクだろ!」
「ピンクの毛布ぐらい、ジジイにも使わせてやれよ!」
しばらく、豪雨の煩さにも引けを取らない二人の口論は続いたが、結局珍しく押しの強い尚樹に負け、渋々貴之は<ピンクの毛布の女の子>を自宅の中に入れることに納得してしまった。
尚樹がリードして、客人を居間に誘導する。
その後ろを貴之が、客人の通った後に付く汚れを雑巾で拭い取りながら四つん這いで追いかける。
「あれ、貴之。おれ<風呂沸かして>って言ったつもりだったけど」
ふと、居間のテーブルに乗っているヤカンを見て、尚樹が首を傾げる。