ミックス・コーヒー

優しい橙

   ①

 貴之が、女と家の中に入って行ってから、約二十分が経った。

 一体、中で何が起こっているんだろう。
 とりあえず、争うような物音は聞こえてこない。

 尚樹は、今は貴之を信じて待つしかなかった。



 その時、ガチャ、と音をたてて玄関のドアが開いた。
 出てきたのは、貴之と美葉の二人だった。


「美葉!」
 尚樹は満面の笑みを浮かべて、歩み寄った。

「……おかえり」

 優しく微笑む尚樹に、美葉もぎこちない笑顔を返した。
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