ミックス・コーヒー

「私が、全部話す気になるまで、ずっと待つ気でしょ？　だから、今、話すよ」
　
　そして、美葉はゆっくりと貴之達に話し出した……。



　母である古亭路美鈴が生きていた頃は、親子でとても楽しく暮らしていた。
　美鈴は仕事で多忙ながらも、できる限り家族と一緒にいる時間を作っていた。

　その母の死は、あまりにも突然すぎた。
　まだ小学生だった美葉には、そのことを理解するのに時間がかかった。

　それは、大人なはずの美葉の父、誠（まこと）も同じだった。

　薄っぺらい紙とゴテゴテした額に納められてしまった美鈴の笑顔の前に座り、ただただ呆然と、時間が流れるのを許してしまっていた。