君が見たいから ~ Extra ~
春の雨



 夜半から降り出した春の小ぬか雨が、今も窓辺を音もなく濡らしていた。


 なんとなくすっきりしない寝覚めだった。8ヶ月になった愛娘が、夕べは何故かご機嫌がよくなかったうえ、珍しく夜泣きをし、なかなか眠れなかったせいだろう。


 寝心地のよい大きなベッドからゆっくりと這い出す。部屋にソンウォンの姿はすでになかった。


 ドレッサーの鏡に映った自分を見て、唯は少し顔をしかめた。我ながら、まったく冴えない顔をしている。

 近付いて細かい所を点検し始めた。近頃、肌につやがなくなってきているようだ。そういえば、先回パックしたのはかなり前だっけ。


 向こうでドアが開く音がして、はっと時計を見た。

 いけない、もうこんな時間になってるのに……。

 ぼんやりした頭を振ると、背中の中ほどまで伸びたストレートの髪をバレッタで留めた。シルクのパジャマの上にゆったりしたカーディガンを羽織り、急いで寝室を出た。



 子供部屋を覗くと、ベビーベッドでセナが丸い頬をばら色にして、すやすやと可愛い寝息を立てていた。

 明け方、あれほどむずがっていたのが嘘のようだ。具合が悪いのかと心配したが、別に異常もなく安堵する。


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