君が見たいから ~ Extra ~
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その日の午後三時……。
唯はユ家の居間のソファーに座り、姑と娘の様子を眺めていた。
『ほーら、赤ちゃん、ばあばのところまでいらっしゃい、セナちゃん、よーく来たわねぇ』
柔らかなドットピンクのカバーオールを着た赤ん坊が、広い居間の大きなソファーの脇をすり抜け、高級じゅうたんの上を縦横無尽に這い回っている。
小さなセナの丸いふっくらした顔を楽しそうに眺めながら、声をかけ続けているのはソンウォンの母ミンスクだ。
赤ん坊の数歩先に身をかがめ両手を打ち叩きながら満面の笑みを浮かべている。
韓国の人は言葉のみならず文字通り全身で情を表現する。今もこの姑のどこからこんな声が出るのかと、いぶかりたくなるほど甘ったるい声と眼差しで、気まぐれな孫娘に繰り返し呼びかけていた。
ソンウォンの兄、ソンジョンには男の子しかいない。姑にとってセナは初めての孫娘になる。
そのためなのか、あるいはソンウォンの娘だからか、とにかくこの孫は絶対に自分に似ていると言って、生まれた時から大層な溺愛ぶりを発揮していた。
次男が日本人である唯と結婚すると言い出したとき、策まで弄して真っ向から反対したミンスクだった。
だが、当のソンウォンがその反対を押し切るようにして結婚した後は、それでも彼女を、ユ家の嫁として認め受け入れてくれていた。