君が見たいから ~ Extra ~
もちろん、日本嫌いが直ったわけではない。今でも彼女への態度がおそらく一番そっけない。
だがそれでも、姑らしく色々言葉をかけてくれ、子供が生まれる前から大層世話になっている。
その一方で、唯もまた当然のごとく自分の実家の十倍以上気を使う羽目になっていた。
用はなくとも電話もたびたびかけてご機嫌を伺う。嫁(ミョヌリ)は実家より婚家の事情最優先、という考えがまだまだ健在なこの国だ。
だが所詮は異邦人、どんなに頑張ってもなかなか韓国女性のようには振る舞えないのも事実だった。
家庭内行事が年々簡略化されていく日本とは異なり、韓国では旧盆や旧正月をはじめとする伝統的な祭祀や風習がいまだしっかりと生活に根ざし残っている。
一年暮らす中で、ここでは親族一同が集まる機会も、日本よりはるかに多いことにも改めて気付かされた。
ユ家の邸に手伝いの人手はいつでもあるにせよ、何か親族行事があるたびに決められた式の準備や食事の采配に責任を持つのは、一家の嫁達の仕事になる。これだけでもかなりの大仕事だった。
ありがたいことに、唯の義姉になったソンジョンの妻ヘヨンは、不慣れな唯にとても親切に接してくれていた。
長男夫婦はユ家の邸で父母と同居していたから、行けば大抵いつも顔を合わせる。義母だけでは気詰まりなとき、この義姉に助けられることがたびたびあった。
ソンウォンと同年齢のヘヨンは、唯にとって一番気軽に話しやすい相談相手だったし、義母に聞けないことも義姉にこっそり尋ねて解決していた。
義兄のソンジョンも、いつも鷹揚に「そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ」と言ってくれている。
さらに、よく集まる顔ぶれの中に、チョルヨンの変わらない笑顔を見つけると、いつも心底ほっとして嬉しくなった。
今年は、自動車部門の営業部で鍛えられていると言っていた。あと何年か経てば、彼もまたソンウォン達のようにグループの中枢に入る逸材に成長するのだろう。