君が見たいから ~ Extra ~
必要ならベビーシッターや家政婦を頼んでも一向に構わない、と何度も言ってくれている夫の言葉にも、頑固に首を横に振り続けてきた。
主婦なら誰でもやっていることだもの、絶対大丈夫。セナの世話も家事も自分でやりたいから。
そう強いて明るく返事をしつつ、ここ数ヶ月、絶え間ない家事と育児に文字通り没頭してきたのだ。
そうでもしていなければ、今の暮らしの中で自分の位置が見えなくなってしまいそうで、少し怖かったのかもしれない。
でもその結果、自分のことは完璧に後回しになっていたみたいね、と今さらながらに気が付く。
これじゃソンウォンさんにそのうち愛想をつかされてしまうわよ、と自分を軽く戒めてから、壁の時計を見た。
今日はあの人、何時に帰るのかしら。
せめて、帰ってきたとき少し話ができるよう、軽くつまめるものでも準備しておこう。
そう考えながらスプリングコートを羽織り、傘と財布を手に外に出た。
一日中降りしきっていた雨も、ほとんどやみかけていた。夜空に雲が切れながら急速に東へ流れていくのが見える。
唯がマンションの自動ドアから出て歩き出したとき、ちょうど一台の白い車が滑るようにやって来て近くに停まった。
道路のオレンジ色の灯りを背に、車からソンウォンが降りてくるのを見て思わず立ち止まる。