君が見たいから ~ Extra ~


 バスルームを使う音がかすかに聞こえてくる。

 ソンウォンの日常はそれこそ結婚した当初から仕事中心に回っていた。

 今年に入り、さらに彼の父、大宝グループの会長から二つの部署を実質的に任せられるに及んで、一層多忙さを増している。

 30歳にして、夫はすでにグループ経営の中枢に確固たる位置を占め、押しも押されもせぬ韓国経済界の寵児の一人になってしまっていた。


 だが……。


 その結果は、圧倒的な仕事量となって二人の家庭生活に即座に跳ね返ってきた。

 彼の帰宅時間はますます遅くなり、連日深夜にかかるのが普通になった。

 国内はもとより、中国や日本への海外出張にもたびたび出向くようになり、毎朝、朝食もそこそこに出かける日々が続いている。

 今では彼の休日以外、夫と夕食を共にすることなど滅多になかった。

 負担が過ぎるのでは? と時に心配するほどだが、彼はその重責を双肩に担いながらも、いつもポジティブに前進していくタイプだった。
 その精神力にはひたすら感心するばかりだ。

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