君が見たいから ~ Extra ~
すぐには返事がなかった。
彼は間を持たせたままゆっくりと腰をかがめ、先ほど唯が取り落とした財布と傘を拾い上げると、ほらっ、と目の前に差し出した。
機械的に受け取りぎゅっと握り締める。
ため息と共に、逆に問いかけられた。
『何を考えてる?』
『何って別に……何も……。そんなことより……』
あなたこそわたしの質問に答えていないわよ、と意地悪な夫を睨みつけると、彼の口元にふっと軽い笑みが浮かんだ。
『テーファが、是非とも僕に報告したいことがあるらしかったんでね、今日は……』
じらすように唯の反応を見ながら、彼は次の言葉を口にした。
『彼女、ずっと付き合っていた政治家の御曹司と結婚するそうだ。今度婚約式がある。ご招待いただいたよ、もちろん君も一緒にね』
目を丸くして、唯は黙り込んだ。
ほっとすると同時に疲れが三倍になったような気分で、咄嗟になんと言えばいいのかわからなくなる。
なるほど、さっき彼女があんなにきれいに輝いて見えたのはそのせいだったのか。
そのとき、ソンウォンが呆れ返った、と言わんばかりの声を上げた。