君が見たいから ~ Extra ~


 はぁ、と小さく息を継いだあと、彼の口から出てきたのは意外な問いかけだった。

『唯……、ひょっとして日本に帰りたいんじゃないのか?』

『えっ?』

『やっぱり、日本のほうが暮らしやすいだろう? 家族も友達もキャリアも、君にとってこれまでの人生の全てが向こうにあるんだ……。当然だろうな……』


 半ば独り言のように呟き、彼は自嘲的に口元をゆがめた。


『わかってはいるんだ。だが、それでも僕は……』


 離さないと言わんばかりにしっかりと抱き締め、ソンウォンはしばらく彼女の黒髪に顔を埋めたまま、じっとしていた。

 彼の胸に押し当てた手のひらに伝わる鼓動が、一瞬不規則になったような気がする。

 あまりにも意外な言葉だった。唯は思わず夫を見上げてしまった。

 彼もまた、唯の目の奥に本心を探ろうとするように、じっと覗き込んでいたが、やがて自嘲するような低い声でこう続けた。

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