君が見たいから ~ Extra ~

『わたしがここにいるのは、セナのためでも、他に選択の余地がなかったからでもないわよ。決まってるでしょう? わたしがここに来ようと思ったのは、あなたがここにいるから。あなたと一緒にいたかったから。あなたをいつも見ていたいから……。そんなの一番初めにプロポーズしてくれたときからよ。それ以外の理由なんか一つもなかったわ。それにね……』

 背伸びして、彼の唇にそっとキスを置いてから、優しく付け加える。

『あなたがそばにいないとダメなのは、わたしも同じよ。日本にも、あなたと取り替えたいものなんか何もないわ。ね? わかった? よーく覚えておいて』

『まったく……、君ときたら……』


 目を丸くして唯を見ていたソンウォンが、一瞬頭上を仰いで目を閉じ、ふー、と深い深い吐息をついた。

 その目の奥に宿っていた蔭りが、次第に強い歓びの色に変っていくのを、唯は微笑を浮かべて見つめていた。

『酷いな。それこそ結婚してから、初めて聞くじゃないか。こっちの気も知らないで、よくも今まで黙っていたもんだ……』

『だってあなた、今まで一度も聞かなかったじゃない』

 澄まして答える唯に、彼が思わず苦笑する。

『これはこっちの貸し、だな』

 いきなりソンウォンは唯の手を掴むと、もと来た道をずんずん戻りはじめた。

 小走りになった唯が慌てて、帰るの? と問うと、そうさ、と目を細め、皮肉たっぷりにちらっと振り返る。

『これは、今すぐ十倍にして返して貰わないとね。幸い明日は休日だ。今夜こそセナが泣こうが、絶対に逃がさないから覚悟しろよ』

『え? は? な、何冗談言って……』

 どぎまぎする唯に、彼はにやりと意地悪く笑いかけた。

『冗談かどうかは……、君にもすぐわかるさ』




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