君が見たいから ～ Extra ～

１

　デスクの上で電話が鳴った。

　取り上げた電話が示す今日の日付に気付いた途端、深い感慨を覚える。

　電話は化学事業部の主任補佐からだった。

　手短に指示した後ゆっくりと椅子から立ち上がると、僕はオフィスの窓辺に立ち、薄く雲のかかった夏空に目を向けた。

　照りつける日差しが街路樹の下のアスファルトに濃い陰をつくり、外の暑さを物語っている。

　ちょうど一年前の今日だった。日本電機サービスとの合同企画で東京に行き、彼女に出会ったのは……。


　もしあの時日本に行かなければ、僕は今頃どうしていたのだろう。

　いや、あの時ばかりではない。多くの出来事が重なった上に、何よりも大切な今のこの日々があるのだから……。


　唯と暮らし始めてから、早くも半年が過ぎようとしていた。