君が見たいから ~ Extra ~


 強硬に反対していたお袋もついにあきらめたように黙認している中、あれこれ合せた式の計画や招待客への手配と準備に手間取り、結婚式は結局、旧正月明けになった。

 日本からは彼女のご両親や友人、それに日本電機サービス社の社長や専務数名他吉岡氏達も招いて、一流ホテルのホールで盛大に執り行う。

 派手なことを好まない彼女は激しく難色を示していたが、新発売の合同企画商品の披露パーティも兼ねていたから、それなりの式になったのもやむをえない。


 そして僕はと言えば、優美なウェディングドレスとベールに身を包んだ唯を目にした瞬間から、あとのことなど完全にどうでもよくなってしまっていた……。



 ハネムーンは二週間、オーストラリアを訪れた。


 広々とした空と海の下、開放感に溢れ思う存分互いの存在を確かめ合う。


 そして戻るとさっそく、引っ越したばかりの新しいアパートメントで二人きりの新生活を始めた。


 だが、残念ながらそうそうのんびりしてもいられなかった。

 僕自身が家電事業部の決算が終わった3月から本格的に部署を移り、新しい環境と仕事にまたしばらく忙殺されることになったからだ。


 それでもかつてと決定的に違うのは、疲れて家に帰ればいつも彼女が笑顔で労わりをこめて待っていてくれること。

 そして毎晩共に横たわるベッドで、心行くまで彼女を抱いていられることだ。


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