君が見たいから ~ Extra ~
少し間があり、ようやく彼女がほっとしたようにため息と共に答えた。
『……もう平気。今15分間隔くらいになってきてるの。これからお義母様と病院に行ってきます。あなたは心配しないで後からゆっくり来てね』
『いいか、唯、落ち着けよ。できるだけ早く行くから……。気を確かに持って頑張るんだ』
『わたしは落ち着いているし、気も確かよ。それじゃあね』
受話器の向こうでくすっと笑う彼女の顔が目に浮かんだ。
思わず舌打ちして通話を切る。まったく可愛気がないと言うか、彼女はいつもこうだ。
だが確かに、咄嗟に出産に望もうとする妻にかけるべき言葉も失うほど狼狽してしまったのは、こちらの方だった……。
気を取り直し、すぐにいくつか電話をかけた。
少し手間取ったが今日のこれからの予定を全てキャンセルすると、僕は急いでオフィスを後にした。