君が見たいから ~ Extra ~
セナが生まれてから、一週間後の昼時……。今も外は猛烈に暑い。
近くまで来たついでに妻と娘の顔を見ようと、ビジネススーツのまま唯が入院している産科病棟の特別室に立ち寄った。
病院内は空調が効いてちょうど良い具合だ。
赤ん坊は授乳のときだけ看護師が唯の部屋に連れてくる。今も新生児室の小さなベッドですやすやと気持よさそうに眠っていた。
唯はこの娘が僕に似ていると言い切るが、どこがそうなのかさっぱりわからない。
だが、その無心な寝顔を見ているだけで、何とも言えない愛しさと優しさが満ちてくるから不思議なものだ……。
「どうして韓国の女の人ってこれに我慢できるのかしら。来る日も来る日も……朝昼晩同じものが一週間も続くなんて、もう信じられない!」
唯の病室に入ると、日本語でこう呻くような声が聞こえてきた。
ちょうど昼食時だったようだ。
お下げに編んだストレートの黒髪をいらだたしそうに背中に振り上げて、スプーンを手に恨めしげに手元のトレーを睨んでいる。
彼女が日本語になるのは、付き添いの婦人にあまり聞かれたくないことを言うときだけだ。