君が見たいから ~ Extra ~


 書類を手にぼんやりと考えていると、前触れもなくノブを回す音がし、次に苛立ったようにノックがあった。

 慌てて引き出しに封筒と紙片を突っ込む。少し間があったが、すぐにドアは開かれた。


 ドアと夫に背を向けたまま、唯はまだ硬い表情でドレッサーの鏡を見つめていた。

 鏡に、閉めた扉にもたれかかり、こちらをじっと眺めるソンウォンが映っている。

 無表情な彼の顔は、今何を考えているのか計り難かった。


 夫のとびきり皮肉な眼差しに出合った途端、謝ろうと思っていた気持が再び強張ってしまった。

 唯は軽く唇を噛み、頑なに彼に背を向け続けた。

 ソンウォンがゆっくりと近付いてくる。背後から、深いため息が聞こえた。


『……ったく、君らしくないことをするんだな。いったいどうした?』

『別に何でもないわ。わたしのことなんか気にしないで、さっさと出かければいいでしょ?』


 感情を抑えた声で冷たく答える唯に業を煮やしたように、ソンウォンが突然動いた。

 背中と膝にいきなり彼の手がかかる。

 抵抗する暇もなく抱え上げられ、傍らのベッドの上にどさりと投げ出されてしまった。

 気が付くと、唯は目をバチクリさせて、仰向けに引っ繰り返された蛙さながらに横たわっていた。

 口元にうっすらと笑みを浮かべたソンウォンが、頭の脇に片腕を付いて唯の顔を覗き込んでくる。

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