君が見たいから ~ Extra ~
『もう少し休んでいればよかったのに。あまり眠れなかっただろ、夕べは……。まったくセナの奴、ぐっすり眠っていれば天使だが、ああなると小悪魔だな。おかげでこっちまでかなりのダメージを喰らう』
ガラスのサーバーにコーヒーが落ちていくのをぼんやり眺めていると、ふいに背後から夫の声がして、ほとんど同時に光沢のあるオーダーメイドスーツの袖がふわりと身体に回された。
気が付くと彼の腕の中に引き寄せられてしまっていた。
振り向いた途端、暖かい息が頬にかかる。
唯が顔をあげるタイミングを見計らったように唇をふさがれて、とっさに目を閉じてしまった。
出勤前に交す朝の軽いキスにしては、いささか穏当さに欠けるほど長く熱いキスだった。
しばらくしてようやく顔を上げたソンウォンの眼にある表情を見て、思わずどきりとする。
黒い瞳の奥にはくすぶるような情熱が確かに顔を覗かせていた。唯が喘ぐように息を継ぐと、まだ彼女を抱き寄せたまま、彼は口元にいたずらっぽい笑みを浮かべた。
『これで三日も君を抱けなかったんだぞ。ったく、我慢にも限度ってものがあるとは思わないか?』
『そ、それって、ゼッタイ朝一番に話すようなことじゃないと思う。もう時間でしょ、寝坊しちゃってごめんなさい。トーストでもいい?』
『いや、もう出ないといけないんだ。そのコーヒーだけもらうよ』