君が見たいから ~ Extra ~
そして、長い口付けが再び始まる……。
彼が顔を上げたとき、快楽の余韻にまだ焦点が合わない目で、唯は懸命に夫を見上げた。
「ソンウォンさん、ソンウォンさん……」
まだ少しこわばっている彼の頬をそっと指先で辿りながら、囁くように愛しい夫の名を繰り返す。
彼はその手を取り上げ、手首に詫びるようにそっと口付けた。
唯、と、ふいに声がかかる。
『僕にどうして欲しいんだ? 今の仕事を……、大宝グループをやめて欲しいのか?』
その言葉には、はっとするような真剣さがこもっていた。
とんでもない! そう激しく否定するように急いで首を振ったが、彼はさらに顔を寄せて、問い続ける。
『なら、どうして欲しい? 僕のポジションは変えられない。明日もあさっても来月も来年も、仕事はずっと続くんだ。僕を見て、はっきり言うんだ、唯』
「そんなこと、わかってる……。ただ、ほんのちょっとしたことなの。そう、どこにも……行かないで。今日だけ、わたしと……、わたし達といっしょにいてくれればいい……だけなの」
『……僕が今から出かけるって言ったかい?』
馬鹿だな、と呆れたように微笑んだ黒い瞳に、強い安堵の色が垣間見えた気がした。