君が見たいから ~ Extra ~


 気が付くと、窓の向こうの空はもう暮れ始めていた。

『さっきのは……ちょっと驚いたわ。なんだかいつものあなたじゃなかったみたい』


 まだソンウォンの腕の中にぐったりと横たわったまま、そっと呟く。彼が軽く笑い声を上げた。

『いつもの君らしくなかったからさ。ちょっとしたショック療法だ。手荒だったけどかなり効いたんじゃないか? これから君が反抗的なときはこの手を使うのもいいな。おっと、待てよ。まだ話は終わってないんだ』


 むっとして身を起こそうとした唯をぐっと引き戻すと、彼はさらりと問いかけた。


『唯……、本当は、何か仕事に就きたいんじゃないのか?』

『どうしてわかったの?』


 目を丸くして、仰向けになったソンウォンの顔を覗き込む。妻を見上げる目には、いつもの優しい微笑みが浮かんでいた。


『前に、テーブルで書きかけの君の履歴書と写真を見かけたからさ。いつ言ってくれるかと待ってたんだ。で? 何がしたいんだい?』

『じ、実はそうなの……。語学院の日本語講師の仕事で、社会人や大学生向けの日本語会話のクラスなんですって。週三回……、本当はもう採用を貰ってあるのよ。ただ夜の6時から9時半だから、あなたがなんと言うかと思って……』
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