君が見たいから ~ Extra ~
『ふうん、なるほどな……。そういえばずっと前に、子供の頃の夢は教師になることだとか言ってたっけ……』
え? と目をしばたかせた唯の乱れた黒髪を手でそっと撫で付けながら小さく呟くと、彼はこう答えた。
『あんまり遅くなるのは心配だけど、それくらいなら構わないさ。君がいい日本語の先生なのは、僕が一番よく知ってる。やりたいなら、無理のない程度にやればいい。君をこの家に閉じ込めておくつもりは毛頭ないよ。セナは、ヨンミさんに見てもらうつもりなんだろ?』
『ええ、もちろん……』
『そうだな、それくらいの時間なら終わった後、僕が学院まで迎えにいける日もあるだろう。週一回でも、二人で外食ってのもいけるんじゃないか? ただし……』
彼は唯の左手を取り上げ、いたずらっぽく付け足した。
『結婚指輪は必ずはめていること。その時間帯は男も多いんだ。学生と侮らず気をつけろよ』
目を丸くしていた唯は、思わず彼にしがみつくように抱きついた。
『ソンウォンさん、大好き!』
『どうせなら、愛してる(サランヘ)と言って欲しいな』
ああ、また完敗ね……。
そもそも、この人に勝てたことは一度もなかった気がするけど。
でも、負けるのがこんなに幸せでいいのかしら……。
夫のぬくもりに包まれながら、唯はしみじみと思っていた。
~ fin ~