ヴァンタン
 でもそれを後目に私も意地を張る。

でも結局母には勝てない。


――ま、仕方ないか……
そう決意する。


無料通話設定の女友達との携帯での長電話は、心を鬼にしなければ終わらせられない。
だから……


「ありがとう。じゃあ又明日」
そう切り出した。


『うん、じゃあね』
相手も事を察したらしく、乗ってくれた。


時々覗かせる母のしかめ顔を気にしながら……

雅との超長電話をやっと終わらせた安堵感。


「わーい、終わった」
母に聞こえるように言った後。
ダイニングで大きな伸びをする。

でも、私は又すぐに携帯を手にする。
聞き忘れた事があった。


「あんなに話した後なのに……。何やってるの」

母は信じられないとでも言いたそうな顔で、濡れた手をエプロンで拭いていた。



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