ヴァンタン
 携帯電話なら何処でもかけられるのに、私は何時も母の傍に居る。

母一人子一人。
きっと心の何処では寂しかったのだろう。


「仕方ないでしょう。聞き忘れた事があるんだから」
そう言いながら携帯のリダイアルキーを押す。


――ん? って言うことは自分から掛けたのか?


――そうだった。肝心な事を聞く為に……


――でも結局……聞き忘れた……


「あ、ジョー? 明日の誕生会の事なんだけど」
やっと言えた。

そうなのだ。
明日はマイバースデー。
正々堂々お酒の呑める二十歳になる。
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