ヴァンタン
其処は既に鏡の中だったのだ。

パパのお土産の鏡は……

やはり本物の魔法の鏡だったのだ。


――鏡よ鏡よこの世で一番美しいのは誰?

心の中で叫んでみた。


――私の筈はないか?
照れ笑いをしている筈の顔を見て、九歳の私が笑っていた。

そう。
まだ九歳なのだ。


そう、あれは確か十歳になる前日。
突然現れたお・ね・え・さんと冒険した。
小さな小さな冒険だと思っていた。
でもパパを探し出す為の、大きな冒険だったのだ。


今改めて思う。
心の何処かに置き去りにして来た思い出が始まったと言う事を。




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