ヴァンタン
それは帆船だった。
マストはメインとフォアの三本。

帆布はしっかり巻き付けられている。


――初めて見た……


――わあ何て素晴らしいんだろう!
私は一人で感激に浸っていた。


――こんな場面……何かに残したい

素直にそう思った。


月明かりに照らされて、浮かび上がる帆船。

雄大な光景を、思いっきり満喫した私。

――チビも見れば良いのに……


真っ暗な夜に満天な星。

おまけに満月。


――えっ、満月!?
思い出した事があった。

――パパが行方不明になったのは……確か満月の夜だった……


ゾォーっとした。

――このまま私達も迷子になったりして……


――違った。行方不明だった。


――そう、パパと同じように……




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