モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
一章

囚われの少女―凍夜


薄暗い部屋の中に、女の
吐息がこぼれる。

揺らめくろうそくの炎に
映し出される二つの影を
凍夜は冷めた目で見ていた。

「う…。」

敏感な部分に触れられた
女が、小さな声を吐き出す。

女の上に覆いかぶさり、
その身体をもてあそんでいる
男は、女の反応に
満足気な笑みを浮かべた。

女といっても、おそらく
まだ二十代にはなって
いないだろう、
やや未成熟で小柄な娘。

そんな華奢な身体に
不釣り合いな鎖が
擦れて音をたてた。

「いつまで遊んでいる
つもりだい、ノークス。」

さして関心のなさそうな
凍夜の問いかけに、
柔らかい女の肌を楽しむように
撫でながら、ノークスと
呼ばれた男が顔をあげた。

「おや、僕ならいつまででも
遊んでいられますよ。
限界まで我慢してからの
方が美味しくいただけますしね。」

まだ、時間をかける
つもりなのか、と、
凍夜が露骨に迷惑そうな
顔をする。

「といっても、僕だって
遊んでいるだけのつもりは
ないのですよ?
いつキミが参加するのかと
待っていたんですから。」

「…キミの悪趣味な
遊びに勝手に僕を
巻き込まないでくれる。」

「わかっていませんね。凍夜。
せっかくのごちそうを少しでも
美味しく食べるための
手段でしょう。
悪趣味なぐらいが
ちょうどいい。」

「つきあってられないね。
…僕はもう休むよ。」


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