モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

模様替え―姫乃

「…!お嬢様!」

「え?」

呼ばれるままに黎明の方を
振り向いたとき、突然、
引き寄せられて身体が
ぐらりと傾いた。

同時に、背後で何か
硬いモノがぶつかる音が
聞こえて、あわてて首を
そちらに向ける。

仰ぎ見たすぐ目の前に
凍夜の顔があるものだから、
姫乃はあやうく悲鳴を
あげそうになった。

「っ…!?凍夜…?」

よくよく見れば、凍夜は
片腕で姫乃を守るように
抱え込み、反対側の腕では
倒れかけた家具を支えている。

「あ…と、凍夜、大丈夫!?」

「問題ないよ。…東雲。」

とっさに放り出されたらしく、
床に投げ出された剣が姿を変える。

少年の姿に戻った東雲が、
倒れかけた家具を軽々と
持ち上げ、手早くどけて
崩れる心配がなくなったところで、
ようやく、凍夜は姫乃を放した。
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