モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
…でも、どうせならもう一回、
もう少し雰囲気のあるキスを
してみたいな…
そんな自分の不埒な思考に
ハッとする。
無い無い無い無い。
あわてて姫乃は視線を
手元に戻した。
あのキスは餌である姫乃に
食事をとらせるためのただの
口移しだし、そもそも
そんなことを考えてる自分が
一番あり得ない。
何とか思考をそらして、
編みかけの膝かけを見ると、
途中から思いっきり目が
ずれていた。
もう一度、凍夜をちらりと
見るが、本に夢中で姫乃の
ミスに気付いた様子はない。
編み物なんかしたことのない
凍夜にはぱっと見たぐらいでは
わからないだろうと、
気付かれないように
こっそり糸をほどいていく。