モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「あ、ダメよ凍夜。ノークスの
分、ちゃんと残して。
ね、ノークス、ひとくちで
いいから。」

そういって、次々刺身を
ほうばる凍夜から
取り上げた一切れを、
姫乃がノークスの口の
前に運んだ。

「騙されたと思って。ね?」

笑顔で目の前に差し
出されてそう言われれば、
先ほどよりさらに
美味しそうに見える。

しぶしぶ口を開ければ、
姫乃の手ずから口に入れられた。

「…。…美味い…。」

驚くほど柔らかく、
味付けしていない鶏肉の
刺身とは思えないほど、
甘味と酸味がある。

「…ワインがほしくなる味ですね…。」

あまりの旨さについそうつぶやいた。
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