モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

不審な影―凍夜

「…。」

夏のさわやかな風を
受けて、凍夜は思わず
顔をしかめた。

清々しいはずのその中に、
微かだが、嫌なにおいが
混じっている。

「…どうしました、凍夜。」

凍夜の様子に気づいた
ノークスが、じっと
凍夜を見ている。

彼の嗅覚にはまだ
届かないのだろう。

「嫌な、血のにおいがする。」

凍夜の呟きを受けて、
ノークスの表情が
真剣味を帯びた。

「…そう、近くでは
ないようですが…。」

「そう遠くもないよ。
…たぶん、時間が
経ってるし、隠されてる。」

「…やはり、この村には
何かありますね。」
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