モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
脱出までは凍夜の
意図だった。

だから、凍夜は黙って
焦ることなく見守る
ことができた。

だが、この先、姫乃が
とる行動は、凍夜に
予測がつかない。

…姫乃に、城に戻る
気があるのかどうか。

それだけが、凍夜は
気になってしょうがない。

「…お姉さま、髪が
短くなって、前より、
すこし、ふっくらしてる…。」

妹が、悪気なく、
容赦ない一言を放った。

姫乃がこの頃、自分の
肉付きがよくなったことを
気にしていると知っている凍夜は、
声を出さずに笑ってしまう。

凍夜にしてみれば、
見た目もちょうどよく
それでいて触り心地も
いい今の姫乃が
好ましいのだが、
乙女心は複雑らしく、
本人は納得できないらしい。
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