モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

帰還―凍夜

しばらく言葉と抱擁を
交わした後、姫乃は
妹を送るために森の
中へ入って行った。

先ほどの姉妹の
会話からすると、
姫乃は当分城に
滞在する気があるらしい。

姫乃が戻ってきたとき、
素知らぬ顔で出迎える
ように、と従僕に指示を
出して、凍夜はノークスと
2人、村を出た。

傍らのノークスに視線を
向けると、彼は難しい顔で
俯いている。

おそらく、あの幼い娘から
たった一人の身内を奪った
ことに罪悪感を感じて
いるのだろう。

「復讐を諦める気になった?」

唐突に凍夜に問われて、
ノークスは顔を上げる。

「…。諦める気はありません。」

「ふぅん。…なら、あの
少女も城に迎える気。」

「…。そうしたい、といったら、
反対するのでしょう。」

「…。」

正直にいえば、凍夜は
あの少女のことはどうでもいい。

気になるのは、姫乃だけだ。
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