モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
ぴしゃり。
相手の振り向きざまに、
何かが、沙羅の顔と
衣服にかかる。
それは、ほんのりと暖かく、
鮮やかな赤色の―。
「!?」
べったりとついた
血のりに気を取られて
いると、目の前の相手が
唐突に沙羅の腕をつかんだ。
視線が血のりから、
相手に移って、沙羅は
悲鳴を上げた。
うつろな目と沙羅の目が合う。
どろりと融けたような顔には、
まるで生気がなく、だらしなく
あいた口からは血と、
何か生々しいモノがこぼれおちた。