モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

吸血鬼―凍夜

「すごいっ!」

少女の顔に素直な歓喜の色が見えて、
凍夜は少しおもしろい気分になった。

変わった少女だと思う。

先ほどまで、あれほど警戒心をあらわにしていたのに、
今は完全に好奇心の虜になっている。

くるくる変わる表情は見ていて飽きない。

「あ…、でも…。」

少女の表情がまた変わる。
今度は、申し訳なさそうな表情だ。

「でも、やっぱり痛かったでしょう?
…ごめんなさい。」

そっと、凍夜の手をとり、凍夜より小さく
華奢な手のひらで包みこんでくる。

「…。痛くなんてないよ。あの程度で、
この僕が痛がるわけない。」

本心からそういったのだが、少女は小さく
笑って手を握り締める。

「ありがとう。」

少女の表情に労りの色が現れる。

どうやら、気を使われたと思ったらしい。

訂正しようかとも思ったが、少女の手のぬくもりが
心地よかったので、そのままにしておく。
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