モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

不審者とのちいさなひみつ―沙羅

真っ黒なコートを着た
男の腕を引っ張りながら、
沙羅は必死に走った。

沙羅自身は別にやましいことを
してはいないのだから、
あの場に残ってもよかったのだが、
沙羅を助けてくれた男は、
村の人に見つかったら
困るかもしれない。

とっさにそう思って、
男を連れてあの場から
逃げ出した。

教会からではだいぶ
遠回りになるが、
滅多に人の通らない
村はずれの林を抜けて、
自分の家のある森に入る。

林を通れば、誰にも
男のことを見られる
ことはないだろう。

そして、森には教会より
強力な結界をはってあると
姉の友人のシスターが
言っていたから、
たぶん、あの怖い化け物は
入ってこれないはずだ。
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