モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

不審者とのちいさなひみつ―ノークス

変な人、などと、面と向かって
言われたのは、生まれて初めてで、
ノークスはこらえきれずに
吹き出した。

笑い続けるノークスを、少女は
不思議そうにじっと見つめている。

「…変な、人、ですか…。
くくっ、そうですか…。」

見つめてくる顔を見る限り、
悪気はないのだろう。

これが姫乃でも相手に
しようものなら、憎まれ口の
一つや二つを返すところなのだが、
あどけない少女が相手では
戦意がそがれる。

「…。」

笑いの治まらないノークスの
手を、少女が無言で掴んだ。

不思議に思って、されるがままに
少女の行動を見ていれば、
ノークスが先ほど自分で
傷つけた方の腕を
まじまじと見ている。
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