モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「おやおや。困った人です。食事の支度もろくにできないとは。
仕方ない、不甲斐無い弟の為に、僕が全てやってあげるとしましょう。」

ドアノブに手を伸ばした凍夜が、振り返ってノークスを睨みつける。

「勝手に兄貴面しないでくれる。キミにそんな真似される筋合いはないよ。」

というか、凍夜にしてみれば、正直、この悪趣味な男と
「双生児」という事実そのものが気にくわないが。

「せっかくの上質の食材の扱い方もわからない男を、
この僕の兄などとは思いたくありませんので。」

「扱い方ぐらい、知ってる。」

「知っていても、使わない知識なら知らないのと変わりませんよ。
大人しく、僕の食事の用意を待っていることですね。」

ノークスのバカにした物言いに、乗せられているとは解っていても、
黙っていられないのが凍夜だ。

ドアに伸ばした手を引っ込めて、つかつかと女の乗せられたテーブルに
歩み寄る。

「…。」

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