モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「特に、処女の血が一番味がいいし、身体に合う。」

掴んだ姫乃の手を引き寄せて、その指先を口に含む。

「…。」

「血の味は、女の感情によって変わる。
好みは多少あっても、共通して好まれるのは…。
淫楽に満ちた味。」

「っ…!」

凍夜が席を立つと、少女の様子が変わった。

昨晩のことを思い出したのか、その顔には
ふたたび恐怖がにじんでいる。

「…殺す気はないし、食事以外を特に強要する気もない。
昨夜は面倒だからノークスの悪趣味に付き合ったけど。」

少女の指をくわえたまま、凍夜は少女の耳下で囁く。

「一応、教えておくけれど、キミに対して遊び半分で
貞操を奪うようなことはしない。
キミは大事な餌だから死なれては困る。
…吸血鬼と交わった女は直後に死ぬよ。」

「!」

「僕たちがキミに望むことは2つ。
美味い血を僕たちに提供することとここから
逃げ出さないこと。」

おびえた様子の少女の手を離すと、
凍夜はそのまま部屋のドアを開ける。

「その二つを守るなら、キミはあとは好きに暮らせる。
…それから、ノークスの嫌がらせから逃れたいなら、
夕食以外はここにいてもかまわないよ。
僕たちは生理的な理由でお互いの部屋には
絶対に入らないから、彼がここに来ることはない。」

そう言い残して、凍夜は自分の部屋から出て行った。
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