モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

地主の思惑

村はずれの森に住む少女、
姫乃の父親は愛称を
フランといい、若い頃は
よく友人と遊び歩いていた。

遊び歩く場所はもちろん
賑やかな街が多かった
ようだが、不思議なことに
フランは好んで辺ぴな
村々にも度々訪れた。

もちろん、地主の治める
この村も例外ではない。

今でこそ年配者の多い村だか、
その頃はまだ若い男女も多く、
その多くがふらりと現れる
フランに傾倒している
節があった。

触り心地のよさそうな
栗色の毛に包まれたやや線の
細い整った容貌と深い海を
思わせる瞳は老若を問わず
村の女性を虜にしたし、
気取ったところの無い
柔らかな物腰と屈託なく
はつらつとした人柄は
同性さえも魅了し
引き付けてしまう。

隣国から来た銀の
髪の美しい妻を娶り、
利発で愛らしい一人娘に
恵まれ、多くの友人知人に
祝福される、幸せな男。


…地主は、そんな姫乃の
父親が、とにかく嫌いだった。
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