モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
…朔夜様の猫さんだわ。

さきほど、手紙を渡した
猫だと確信して、沙羅は
屋敷の周辺をうろうろと
一周してみる。

もしかして、朔夜が
いるかもしれないという
うれしい期待は、
残念ながら実ることが
なかった。

しかし、飼い主である
朔夜がいないのなら、
沙羅があの猫を捕まえた
ほうがいいのではないだろうか。

地主の家の中はけっこう
入り組んでいるから、
猫が迷子になったら
なかなか出てこれない
かもしれないし、
その間もし朔夜が猫を
探していたらずっと
見つからなくて困るかも
しれない。

そう思って、猫を探させて
もらおうと地主の屋敷の
門をたたくが、地主は
おろか使用人さえ出てくる
気配がない。

何度たたいても誰も
出てこないので、沙羅は
困り果てて庭から中の
様子を見ようと先ほどの
窓に近づいた。

窓の中を覗き込んでも、
猫の姿はない。
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