モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
逡巡している
ノークスのコートの
襟がつんと引かれた。

腕の中を見ると、
ノークスの胸元を
握り締めた沙羅が、
不安げにこちらを
見あげている。

ここまで話を聞いて
しまったのだから、
下手に隠しだて
しない方が彼女の
ためかもしれない。

自分を見上げる
海色の瞳は、幼い
年齢にそぐわず
しっかりと現実を
とらえようとしている
気がした。

もう数秒だけ逡巡した
のち結論をだし、沙羅の
頭をなでる手を離すと、
その手の人差し指を
立てて静かにして
いるよう指示をする。

腕の中の少女は
ノークスの意図を
理解して小さく
うなずいた。
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