モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

「悲鳴が聞こえましたが、
大丈夫ですか？」

どうやら、沙羅は悪夢に
おびえて悲鳴をあげて
しまったらしい。

「…ごめんなさい。
怖い夢を見て…。」

「あぁ…。どんな夢です？」

他人に内容を話すと、
悪夢は去っていく
ものですよ、と促され、
沙羅は申し訳なく思い
ながらもぼそぼそと夢の
中の話を始める。

人の姿の化け物が、
母親と姉と沙羅を襲って、
目の前で母親は食べられて
しまったこと。

姉が、見知らぬ男に連れ
去られ、とてもとても
苦しい思いをしていたこと。



そして。



連れ去られた姉と
再会した時に。

「…わたしが、お姉さまに、
お父様の本当の子供じゃ
ないからもういらないって
言われたの。」

「…。」



こらえようとした涙が、
こぼれた。