モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「わたし、知らなかったの。
お姉さまのお父様と、
わたしのお父様がちがうって。」

そのことを、姉は知って
いるのだろうか。

顔も知らない父親の
存在など沙羅は正直、
どうでもいい。

沙羅ににとって何よりも
重要なのは、そのことを
姉が知らなかった場合、
それを知られて厭われる
ことだ。

「…姫乃は、そんな娘では
ないでしょう。」

朔夜にそう言われ、沙羅は
涙を止められないまま、
朔夜を見つめた。

気休めでしかない言葉では、
沙羅の心の暗雲を払うには
至らない。

「彼女がそういう人間なら、
凍夜は彼女にあそこまで
執着しません。」

しかし、予想もしていない
根拠をだされて、沙羅は
ひどく戸惑った。
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