モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
悪夢を見たくない一心で、
沙羅は閉められようとする
ドアの隙間から朔夜の服の
裾をつかんで言った。

「…一緒に、寝ちゃだめ?」

つい、甘えたことを
言ってしまって、沙羅は
恥ずかしくなって俯いた。

いくら姉の知り合いで、
毎日沙羅を気遣って
来てくれるといっても、
彼は身内ではない。

そんな彼に、まるで兄姉に
ねだるようなわがままを
言っていいわけがない。

ましてや、沙羅は
もう10歳だ。

一人前の女性として
扱われるにはまだまだ
及ばないが、無条件に
甘えの許される
子供、というには
すでにだいぶ大きく
なっている。
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