モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
…ああ、でも、顔に触れたら、
きっと起こしてしまうだろうし。

そう思った姫乃は、それでも
凍夜に触れることを諦め
きれなくて、手を伸ばす。

…髪の毛をちょっと撫でる
くらいなら、起こしたり
しないんじゃないかしら。

瞳と同じ色の漆黒の髪も、
姫乃にとっては触りたくて
たまらない場所だ。

そろっと、指先で髪の毛を
撫でてみる。

一度様子を見てから、
その動作を繰り返す。

瞳と同じ漆黒のさらさらの
髪の毛は、ひんやりと
冷気を孕んでいるような
手触りでくせになる。

夜の食事のときに
さわらせてもらって以来、
姫乃はこの手触りの虜に
なってしまった。
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