モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
なのに、どうしてか、
この頃は凍夜も、同じ
髪質のノークスも、
姫乃が髪を触るのを
嫌がる。

ノークスは、単純に
姫乃が執拗に触るから
嫌がっているようだが、
凍夜の方はそういう
わけでもないらしく、
いまいち理由が
わからない。

そんな凍夜が起きないのを
いいことに、姫乃は
心ゆくまで凍夜の髪を
撫でまわした。

いいだけ撫でて、さすがに
凍夜を起こしかねないと、
どうにか手を止めて、
再び凍夜の顔を覗き込む。

…やっぱり、まだ触り
足りないかも。

まだ、触れていたくて、
そっと、顔にかかった
髪の毛を耳にかける。

髪の毛をよけた指先が、
凍夜の頬を軽くなぞって、
耳たぶに触れた。

「…。」

ほぅっとため息をつく。
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