モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
気持ちがいいので、
そのまま好きにさせて
おくと、ずいぶん
長い間、姫乃は凍夜の
髪を撫でていた。

夜の食事のとき、
姫乃が自分の頭を
撫でたがっているのを
凍夜はもちろん
知っている。

気持ちよくて最初は
好きなだけ触らせて
いたが、それを
ノークスにも
したがるのが気に
くわなくて、最近は
全く触らせていない。

不意に、頭を撫でる
手が止まり、そのあと、
一度だけ頬を撫でられた。

さすがに、そろそろ
起こされるだろうか。

しんと静まり返った
室内で、姫乃の小さな
ため息だけが聞こえる。

突然、ふっと、耳に
微かな吐息がかかった。

驚いて目を開けるより
速く、柔らかくて
暖かいモノが頬に
押し付けられた。
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