モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
姫乃の感想を聞けば、姫乃が
どんなモノが好きなのか
知ることができるのだから、
凍夜にしてみればことさら
楽しいことだらけだ。

そして、ここ最近の
読書傾向で、姫乃が
いわゆるロマンス小説に
強く興味を持っている
ことに凍夜は感づいている。

「…『お探ししました、
私の姫君…こんなところに
囚われて、さぞ、心細かった
ことでしょう。貴女の身体に
残した口付けの痕など、
きっともう』…。」

「キャーッッッ!!!?」

昨日、姫乃が借りた
運命の姫君という本の
一番の見せ場らしい、
騎士のせりふを暗唱し
はじめれば、後半の
せりふが姫乃の声で
かき消された。

「!」

ゆであがったかのように
真っ赤な顔で、姫乃は
こちらを振りかえり
凍夜の口をふさごうと
腕をのばす。

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